2021/10/13

「スポーツ情報って面白い!」④/ニュース コロナ下の禍福

 萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗。秋の七草はどれも、風に揺れる姿がよく似合う。春や夏の花と比べて茎が細いせいだろう、花は静かに前後左右に舞う。日がな一日じ~っと見ていると、なぜだかコロナ禍のなかでニュースを追う記者たちの姿とダブってくる。折れそうで折れない‥。
 

◎千編一律の様相、記者たちの息遣いはどうも感じにくくなった
 例えば先の全国高校野球選手権。記者たちは自由に選手から話を聞けなかった。試合後「あの絶好機、どんな球種を待ってた?」「敗因は何だと思う?」「野球、卒業後も続けるの?」。あれもこれも質問したいのにかなわない。運営側が三密回避から記者の数や質問数に制限を設けたからだ。
 そこで記者たちが頼りにしたのは「代表取材」である。特定の記者が監督や主将、ヒーローに聞き、その内容を各社と共有する。
 コロナの感染拡大以降、一事が万事である。東京2020五輪・パラリンピック、プロ野球、Jリーグ、そして海の向こうの大リーグまで、代表取材やオンラインによる一問一答が主流となり、各社が報じるニュースはまるで千編一律の様相を呈した。記者たちの息遣いはどうも感じにくくなった。

◎入念な周辺取材、記者たちの力量が試される
 ニュースの伝え方はもちろん客観報道が基本である。しかし、浮き彫りにした「事実」の社会的意味合いを深掘りする作業も重要であり、事象・事案をときには記者ならではの感性で分かりやすく「物語化」しなければならない。ニュースの受け手に丁寧な背景説明をしてあげることで実相の理解が進む。補足や追加の取材は記者ならではの腕の見せどころだし、その果実こそがニュースに息吹を注ぐ。
 ただ、五輪をはじめとするビッグイベントに出場する選手たちは健康管理に十分注意を払い、第三者との接触を必要最小限にとどめている。記者たちはそんな八方ふさがりのなかにあって、周辺取材に活路を見いだしているかのようだ。
 五輪・パラリンピックを報じる新聞を繰ると、記者たちの奮闘ぶりが伝わる。地元紙の河北新報は両親やかつての指導者を訪ねて、選手の知られざるエピソードを数多く引き出していた。全国紙も負けてはいない。選手の実家や母校を巡り、強さの秘密に迫った。
 試合結果と各社共通の談話だけで報じられるニュースは実に味気ない。隠し調味料のような、もう一つの「裏情報」を少しでも添えれば、その情報は見違えるほどに読み応え・見応えがあるものに変わる。



◎足で稼いだ情報こそがニュースの読みどころ・見どころ
 独自情報が散りばめられたニュースは読んだり見たりして楽しい。プロ野球選手がスランプから浮上したきっかけが克明に説かれていれば、ファンにはたまらぬ贈り物になる。球団が報道各社に用意した共有談話だけでは物足りないのだ。
 記者たちが独自情報を求めてしのぎを削り合う環境が早く日常化するといい。思いを他日に残すのもいいではないか。記者たちは自らの足で稼ぎ、いつかきっと、金塊(特ダネ)を見つけるであろう。

  禍福はあざなえる縄のごとし。コロナ下、記者たちは強い風が吹こうがうまくいなす。胸に花は咲いている。



おことわり 連載①~③は「です/ます」調でしたが、④は「だ/である」調の書き言葉で表しました。

<スポーツ情報マスメディア学科 教授 日下三男>
 

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